特徴を一撃で、別ジャンルに飛ばす
例えツッコミパターンは、目の前の対象から尖った特徴を1つだけ抜き出し、その特徴を共有する「まったく別ジャンルの具体物」に飛ばして、「〜かい!」と短く切るツッコミの型です。
たとえば、傘もエコバッグも水筒も充電器も詰め込んで、パンパンに膨らんだ通勤鞄。ここから抜く特徴は「全部入りで重い、過剰装備」の一点。それを登山という遠いジャンルに飛ばすと——
「冬季エベレストの装備かい!」
フリは、状況が勝手に作ってくれます。オチにあたるのは、その特徴だけがぴたりと一致する「遠い具体物」。これを一発で当てるのが、この型の勝負どころです。
なぜ「的確なのに意外」で笑えるのか
この型の笑いは、「的確」と「意外」の掛け算で生まれます。
抜き出した特徴が本当に一致しているのが「的確」。飛ばした先のジャンルが遠いのが「意外」。聞き手の頭のなかでは、「え、なんの話?」という一瞬の緊張が走り、次の瞬間「あー、確かに!」という納得が追いつく。この緊張から緩和への切り替わりが、ほんの一瞬で起きるのが快感になります。
大事なのは、これが片輪では回らないことです。的確でも近ければ「そりゃそうだ」で終わり、意外でも特徴が外れていれば「なんの話?」のまま置いていかれる。両輪がそろって初めて、笑いになります。
飛距離の3段階(近い/ちょうどいい/遠い)
飛距離のさじ加減を、2つの対象で見てみましょう。
対象A:真っ黒に文字が詰まった会議スライド(特徴=判読不能なほど情報が詰まっている)
- 近い(説明的):「新聞かい!」——用途が同じで当たり前。飛ばした気になれません。
- ちょうどいい(ウケる):「死海文書かい!」——“解読困難で誰も読めない"まで一致し、考古学という遠さもある。
- 遠い(伝わらない):「マリアナ海溝かい!」——“深い・暗い"は共通でも、“判読不能に詰まっている"という肝心の特徴が一致していない。
対象B:遅いうえに「了解。」だけの上司の返信(特徴=反応が最小限・定型)
- 近い(説明的):「塩対応かい!」——慣用ラベルを貼っただけで、飛距離ゼロ。
- ちょうどいい(ウケる):「電報かい!」——“字数を切り詰めた定型の短文"が一致し、通信という遠いジャンルの固有の像が浮かぶ。
- 遠い(伝わらない):「一休さんのとんちかい!」——“短い"は共通でも、“機知に富む"が逆で、特徴が合っていない。
ここが、この記事の芯です。「遠すぎて伝わらない」失敗は、実は距離のせいではありません。特徴が一致していないから落ちるのです。遠くへ飛ばすのはジャンルだけ。特徴の一致は、最後まで手放してはいけません。
作り方3ステップ
- 特徴を1つに絞る:あれこれ盛らず、いちばん尖った1点だけを抜く。「重い」でも「多い」でもなく、その対象の"らしさ"がいちばん出る一点を選びます。
- ジャンルの外で、同じ特徴を持つ一点物を探す:ここが山場です。「反応が最小限」なら、“自動応答"のようなカテゴリ名ではなく、“電報"のように像がくっきり浮かぶ固有の物を選ぶ。名詞が具体的なほど、絵が立ちます。
- 「〜かい!」で短く切る:説明を足さないこと。「電報かい、昔の」などと補足した瞬間に興ざめします。断ち切るからこそ、笑いになります。
ノリツッコミとの違いと使い分け
似た型にノリツッコミパターンがありますが、時間の使い方がまるで逆です。
ノリツッコミは「時間芸」。ボケに乗る→ためる→我に返って戻る、という三拍子で落差を作ります。対して例えツッコミは「瞬間芸」。乗る時間はゼロで、特徴を一撃で別ジャンルに写像し、「〜かい!」で断ち切る。勝負は、写像の精度と速度だけです。
使い分けの軸は「乗る時間を作れるか」。間を張れる場面ならノリツッコミ、一発で決めたい場面なら例えツッコミ。乗ってから例えて戻る合わせ技は、上級コンボです。
具体例
何を送っても、返事は「了解。」の一言だけの相手に
「電報かい!」
物が積み上がって、作業スペースが数センチしかない机に
「エコノミーの足元かい!」
「検討します」のまま半年止まっている案件に
「99%で止まるインストールかい!」
二転三転して、いつまでも確定しない飲み会の日程に
「気象庁の週間予報かい!」
どれも、対象の特徴を1点だけ抜き、通信・航空・IT・気象という遠いジャンルの一点物へ飛ばしています。状況がフリになっているので、前置きはいりません。
コツと注意点
- カテゴリ名でなく一点物へ:遅くて短い返信に「自動応答かい!」では、やっていることをほぼそのまま言い換えただけ。近すぎて説明的で、飛距離が出ません。同じ特徴でも「電報かい!」なら、遠いジャンルの固有の像に飛んで笑いになります。
- 特徴一致は絶対に外さない:突飛さより、的確さが先。遠くしようと欲張って特徴を外すと、いちばん肝心なところで滑ります。
- 短く切る:オチに解説を足さない。断ち切りで笑わせる型です。
- 多用しない:連発すると"例えの人"になって、かえって効かなくなります。
- 人ではなく、物・状況・場に寄せる:例えの矛先は、対象の見た目や身体的な特徴ではなく、行動・状況・物に向ける。特定のお店や個人を名指しでからかうのも避けましょう。
まとめ
例えツッコミパターンは、対象の特徴を1つだけ抜き、遠いジャンルの一点物に写像して「〜かい!」で切る型です。ウケるのは「的確×意外」がそろった帯域だけ。遠くへ飛ばすのはジャンルであって、特徴の一致は最後まで手放さない——ここさえ押さえれば、日常の"あるある"が一発の笑いに変わります。
なお、別ジャンルへ飛ばすのではなく、同じ軸のまま倍率だけを上げる型は、兄弟パターンの誇張パターンで解説しています。